照男との別れを惜しんでいたころ。
ベテランのお母さんのひさこさん、そして初産のちかさんが、続けて出産しました。

ひさこさんはいつのまにか〜という感じで女の子を無事出産。一方のちかさんは、予定日を過ぎてもなかなかその兆候がありません。
ある朝、牧場に行くと、なんとまさに今!出産中ではありませんか!

大半は自然分娩が行われるものの、最近では雄牛の遺伝子がどんどんどんどん大きくなっていこともあり、いままで普通に出産できていたお母さんが産むのも難しいくらいに大きな赤ちゃんがでてくることもあるそうでお産は常に心配がつきものです。

 

「産まれそう!」

Tさんの言葉で我に返ったわたし。よく見ると、お母さんの子宮口からは、子牛の足だけが出ています。

いつ始まったかわからない状態だったため、即、介入することに。
お母さんの頭と鼻を紐でつなぎ、赤ちゃんの足も紐で縛り、滑車を使って両側から引っ張る作戦です。

「ひっぱって!」と言われて、わたしもゲージの中に入り、無我夢中で思いっきり引っ張ります。

初めて見るお産の現場になにがどうなってるのかわからないままでしたが、よく見ると、子牛の口元が覗いています。口元だけではありません。長さ20センチほどのベロもだらーんと出ているではありませんか。
わたしがこちらに来てからすでに二度ほど、赤ちゃんに出会えなかったことがあったので、その不安がよぎります。

 

え===っ

 

このままで大丈夫なんだろうか!?

息してないけど大丈夫なんだろうか?

 

息していないのは当たり前なのに、そんなことすらわからない。

 

そしてその瞬間!つるつるつる!っと、お母さんの体から子供が滑りでてきました。

 

横たわり、おかあさんは放心状態。。。

 

Tさんは、すかさず、子牛の鼻の通りをよくするために粘膜で覆われた状態の鼻の穴を吸い、息ができるようにしてあげていました。

 

ほっとする間もなく、次はお母さんが赤ちゃんをきちんと舐めてあげるか、子供を立たせてあげるか、おっぱいをあげれるか、を観察します。
わたしはその間に馬と散歩。

帰ってきて、わたしの姿が近づき我に返ったちかさん。およそ15分くらいでしょうか。放心状態だったのですが、意識がもどったかのように立ち上がりあかちゃんを舐め始めました。ほっ。

そして、自然の世界はすごい。いろいろな脅威がありますから、まずはすぐにあかちゃんを立たせてあげなければなりません。あかちゃんも必死で踏ん張る。お母さんは鼻を使って立ち上がらせようと必死です。

立てるかな・・・!? ごろーーーーんっ!

次はどうか! ばたーーーーーんっ!

の繰り返し。

 

10分後。

ようやく、たったーーー!!! やった!! よくやった!!

 

今度はおっぱい探しです。

目の見えないあかちゃん、フラフラしながらお母さんのお腹の中に潜り込もうとしますが、なぜかちかさん、それを拒否。足で通せんぼうをしたり、動き回って逃げています。

なんでだろう??

 

むずむずして痒いから、逃げている、

おっぱいが張ってないから飲ませたくない、

などいろいろと考えられるようですが、いよいよ、あかちゃんが飲み出したらおとなしくなりました。お母さんも初めてのことばかりで、わからないことばかりなのですね。

そう思うと、あかちゃんはなにも教わっていないのに立ち上がろうとしたり、おっぱいを探したり、どちらかというと全部を把握しているかのように見えました。こどもの力ってすごいなぁ!

ということで、照男の後を引き継ぐかわいい男の赤ちゃんが産まれました。
めでたしめでたし。

 

牧場にいる間、のびのびと、元気に育ってくれますように。