森
リトアニアや北欧諸国を旅する時、よく耳にするのは「私たちには森がすぐそばにある」というフレーズです。都会の中にも川、大きな木々が共存していて、都会からそう離れていない場所にはハイキングが出来るような自然が広がっています。彼らの「森がある」というその言葉には、すこし誇らい気持ちが含まれているように私には感じるのです。距離ももちろんそうかもしれませんが、精神的な意味でも生活の一部として存在しているからかもしれません。
日曜日。この日は、森の中にある家で一日過ごす予定にしていました。
Virginijaが暮らすこの森も、200年300年はたっているであろう木々がそびえたち、同時に次世代の小さな命を育んでいる様子を目の当たりにします。
彼女の庭には、こけと芝が混じり合うふかふかの絨毯が広がっています。裸足であるくと気持ちよく、朝の雨を含んだ芝と、太陽が乾かしたあとのあったかい芝とが交互に足の疲れを解き放してくれました。
キツツキの木をつつく音。
風が吹くとひらひらと降り注ぐ木の葉。
松の木の根元に見える地衣類からこけへと移り変わるグラデーション。
葉っぱにはおしゃれな柄を背負った虫たち。
日向ぼっこの仲間に加わってくれる、野生の猫。
いい匂いのする樹液。
高い木々は頭上でゆらぎ、まるで木同士で囁きあっているような気分になります。
午前中は庭で過ごし、午後からは、前回の旅の間に私にクッキングレッスンをしてくれた、料理家でラジオプロデューサーのNidaと三人でハイキングに出かけました。世界中を駆け巡る彼女の話題は豊富で、先日モザンビークのマラリアのプロジェクトに出かけてきた話や、世界の大統領のキッチンについての話。歩きながら聞く話は、お茶を飲みながら聞いているのとまた興奮が違います。
そして周りを見回せば、木を駆け上るリス、大きなカタツムリ、見たことのないたくさんの生き物たちが、森には暮らしていました。
息を吸い込むと、青い空気が一気に身体を浄化してくれるようです。